音想-音ゲー感想企画-

音ゲーに対する思いを「言葉」で表現する企画「音想」のサイトです。

貴方は階段を駆け下りながら歌うのは好きですか? ~「Do you love me?」が果たした2つのターニングポイント~

 

皆さん、こん焼きうどん(挨拶)。

音と物語を創る焼きうどん系Vtuberことげーまー哲と申します。

 

今回『音想-音ゲー感想文企画-』と呼ばれる、音ゲーへの思いを文章にする企画に参加することになり、本記事を執筆することとなりました。

 

そして、私が紹介する楽曲及び譜面はKONAMIより制作されているbeatmaniaシリーズの「Do you love me?」になります。

 

この楽曲は私は勿論のこと、音楽ゲームを当時プレイしていた人に対し2つの重要なことと教えを伝えてくれたと思っております。今回はその点について詳しく執筆したいと思います。この記事を読めば、音楽ゲームの黎明期の話が少し詳しくなると同時に、ボーカル楽曲の印象が少し変わることでしょう。

 

 

1:音楽ゲームbeatmania』とは

beatmania』はKONAMIが1997年にゲームセンター向けに稼働させたアーケードゲームです。KONAMI製の音楽ゲームのブランド名にもなっている「BEMANI」はこの『beatmania』を元にしており、KONAMI製の音楽ゲームの始祖とも言えるタイトルです。

 

プレイヤーはクラブのDJとなり、楽曲をサンプラー*1を模した5つのボタンとレコードプレイヤーを模したターンテーブルを用いて、画面上部から落ちてくるノートが画面下部の赤いラインに重なった時に、対応するデバイスをタイミング良く押します。

 

タイミングが正確であればあるほどスコアとゲージが上昇し、逆にタイミングが外れているとスコアは獲得出来ず、ゲージも減少。最終的に、1つの楽曲が終了した時点でグルーヴゲージと呼ばれるメーターが一定量に達していればステージクリアになります。

 

当時では画期的なシステムと、今までのアーケードゲームとは一線を画す筐体のインパクト、そして何より今まで脇役であった「音楽」という要素を主役に押し上げ、当時流行していた音楽ジャンルをいち早く取り入れていくことであらゆる客層に大ヒット。音楽ゲームというジャンルを世間一般に浸透させていきました。

 

なお本作は5年間シリーズが展開されておりましたが、2002年に『beatmania THE FINAL』が稼働したのを最後にその歴史に幕を閉じ、後継作であるbeatmania ⅡDX』にその道を譲ることになりました。

 

そして、『beatmania』より鍵盤の数が2つ増えた『beatmania ⅡDX』はシリーズを展開し続けながら今なおKONAMI内、さらに言うなら全ての音楽ゲームの先頭を走り続けている音楽ゲームのパイオニアとも言えるタイトルとなっています。

 

2:Do you love me?は階段譜面の始祖?

 

さて、今回紹介したい楽曲である「Do you love me?」は1998年に稼働を開始したシリーズ2作品目にあたる『beatmania 2ndmix』で初登場しました。

 

youtu.be

 

beatmania』シリーズでは楽曲に必ずジャンル名というものが割り当てられているのですが、本楽曲はBALLADE(JAZZ-SOUL)が設定されています。バラードはゆったりしたテンポ、静かな楽想、美しいメロディラインやハーモニー、そしてラヴソングを中心とした感傷的な歌詞を音楽的な主軸とし、楽式的には、ピアノなどによる静かなイントロとエンディングに向けての劇的な盛り上がりが特徴”Wikipediaにも記載がある通り、本楽曲のBPMは100となっております。

 

人間の心臓の鼓動の平均が1分間に100回と言われており、それよりも早いBPMの音楽は人間が感じるリズムとしては早いと言われています。なので、BPM100というのはまさに早すぎず遅すぎず、丁度良いリズムの楽曲なのです。

そして、私が思うDo you lve me?を象徴する譜面はここです。

 

(参考:https://www.youtube.com/watch?v=oGXPDLnn-DE)

 

この素晴らしいほどの16分階段譜面。これが2回振ってくるのです。

「BPM100の16分なんて遅い」と今の音ゲーマーであれば思うことでしょうが、『beatmania 2ndmix』が出た当時は全ての楽曲をあわせても24曲。そして「Do you love me?」の難易度は6段階中の難易度2と設定されています。つまり本楽曲は初心者向けの楽曲なのです。それなのにこの様な階段譜面は当時他の楽曲にはほぼ存在しないのです。

 

さらに、『beatmania』というゲームのデバイスは階段譜面を叩くために一苦労する形になっています。ピアノの鍵盤の様に隣同士が重なっているわけではなく少し離れているため、初心者は鍵盤の間と間を押してしまうということが多発するのです。インターネットも発展していない当時は、指を固定するという発想に初心者が気づくことも難しい環境でした。

 

それに加えスクラッチというデバイスは、ボタンを叩くのではなくターンテーブルを押す・引くという普段生活している中、もしくは従来のゲームでは殆どやらないような動きを要求して来るため、初心者はどうすればいいのかあたふたしてしまいます。その2点が重なり、「Do you love me?」の階段譜面地帯は多くの初心者を泣かして来たのです。勿論私もです。

 

同時に、『beatmania』シリーズは楽曲を演奏するゲームのため、上手く叩け無いと音楽が綺麗に奏でられないのです。しかも紹介した譜面の箇所はメインのメロディフレーズが割り当てられています。そのため、初心者は綺麗なピアノをプレイ中に奏でる・聞くことが出来ません。

 

その為、私も含め初心者は「Do you love me?」を何度も何度も遊び練習していきました。そして練習と試行錯誤の末、ある時を境に階段譜面を綺麗に叩くことが出来るようになります。その上手く出来た瞬間のメロディラインの切なさ、美しさ、自分が上手くなったことの達成感。自分で演奏しているからこそ、この瞬間が本当に感動するのです。

 

同時に、こうも思うのです。

「自分は階段譜面を克服した」と。

 

努力が報われた瞬間流れるメロディラインに心を奪われる人も多いことでしょう

 

これこそが階段譜面の始祖であり、そして階段譜面の難しさ、楽しさを初心者に教えてくれた「Do you love me?」という楽曲における譜面の貢献点だと私は思っています。

 

3:「Do you love me?」が切り拓いた”歌モノ”の歴史

さて、今度は曲としての歴史についてお伝えします。本楽曲は先程も申した通りシリーズ2作品目にあたる『beatmania 2ndmix』で初登場しています。

 

最初の縦連打でお馴染み「LOVE SO GROOVY」

では、1作目に歌モノは存在していなかったのかと言われるとこれはNoです。1作めには「LOVE SO GROOVY」という楽曲が存在しています。(正確には「u gotta groove」や「jam jam reggae」など声が入っているものは沢山ありますが、歌謡曲とは少々違うので除外しています)

 

 

しかし、「LOVE SO GROOVY」をプレイするにはその前の3曲をクリアしなければなりません。さらに譜面自体も難易度が5段階中4(beatmaniaの初代は難易度が5段階です)とかなりの高難易度譜面になっており、初心者向けの楽曲ではなかったのです。なので、プレイ中に曲を落ち着いて聞ける状態には中々なりませんでした。

 

一方、「Do you love me?」はノーマルモードの2曲め。1曲クリアすれば誰でも遊べるのです。

さらに楽曲の後半は以下の様な譜面になっています。

 

参考:https://www.youtube.com/watch?v=oGXPDLnn-DE

beatmania 2ndmix』の時代にはフリーゾーンというスクラッチを自由に回す場所があります。最高判定を取るには薄い黄色の線でタイミング良くスクラッチを回さなければいけませんが、それなりの判定でよければフリーゾーン内でどこでもいいので1回以上回せばOKという激甘仕様です。このゾーンがなんと4小節の間流れ続けます。

 

また、鍵盤も1小節に1個しか振って来ないので操作が忙しくなることもありません。なので、プレイヤーは最後のコーラスを余韻に浸りながらプレイすることが出来るようになっています。

 

この譜面構成が非常に上手く、またBPM100というテンポ、楽曲の構成、透明感のある英語の歌詞による歌声。初心者に歌モノを聞かせるための配慮が全て揃っており、本楽曲は歌モノが音ゲーにとって素晴らしいものであるということをプレイヤーに浸透させたと私は思っています。

実際、本楽曲は人気楽曲の1つとなりリミックスがいくつも作られました。歌モノのリミックス楽曲はそこまで多くないので、それだけ本楽曲がプレイヤーに与えた影響は大きいものだったのではないかなと推察しています。

 

なお、リミックス楽曲の中で私個人としておすすめなのは「Do you love me? (FINAL EDIT) 」です。当時の現代風にリアレンジされており、非常に聞きやすくなっています。

 

また、歌詞の意味は直球です。 「友達以上の関係になる準備はいつでも出来ている、だから貴方のしたいことを教えてよ」と言っています。この想いが届くかは…

 

そして本楽曲を作った『beatmania』を作り上げた始祖でもあるreo-nagumo氏はこの楽曲を始まりとして悲恋楽曲シリーズを何曲も出しているので、本楽曲を聞いて興味を持った人はぜひ他のシリーズ楽曲も聞いてみて下さい。おすすめは「MOMENT」です。

 

4:貴方は階段を駆け下りながら歌うのは好きですか?

そんなことを言われて「はい、好きです」という人は余りいないでしょう。しかし、この「Do you love me?」という楽曲は階段譜面を音ゲーマーに鮮烈に印象付け、階段譜面の難しさと叩けた時の楽しさを伝えてくれた楽曲だと私は思います。

 

そして、歌モノの楽曲として皆に愛され、音楽ゲームにおける歌・声が入ることの素晴らしさもまた音ゲーマーに伝えてくれたと思っております。

 

だからこそ、私は言いたいのです。

“たまには、階段(譜面)を駆け下りながら、歌って遊ぶのもありじゃないか”なんて。

人に迷惑をかけないところなら、どんな遊び方をしたっていいのです。それに音楽ゲームなのですから、音を楽しまず遊ぶなんてそれこそ勿体ないのではないでしょうか。

*1:拾ってきた音を任意に再生・出力できる装置のこと。主催者注